総一郎は小さなアトリエで、一人の生徒がやって来るのを待っていた。
「で、お願いってなにかな」
きっと、今、わたしは可愛くない顔をしているに違いない。 でも、しょうがないじゃない? わたしは、これから戦いにおもむくんだから。
「うわん!」
返ってきた答えは、十二の少女が発するにはあまりふさわしくないものだった。
「自分の心と対話しているの」
あめ、あめ、あめ、雨が降る。 遠い遠い雨の日が見ていたジョゼルマリーの姿。
「確かに昔、わたくしはこの部屋で暮らしておりましたの」
茨木亮太は、この春中学に入学した頃から胸に抱いていた違和感の正体に、ようやっと気づいた。
「……あぁ、そうか」